結論:週3・週4でも年収を保てるかは「時間単価」で決まる
週5で月80万円を稼いでいるエンジニアが週3に減らした場合、収入は48万円になるとは限りません。単純な比例計算では48万円ですが、短時間の契約では時間単価が上がることも下がることもあります。どちらになるかは、案件の選び方と交渉の仕方で決まります。
月単価ではなく時間単価で比べる理由
月単価は稼働日数によって大きく変わります。そのため、週3案件の月単価と週5案件の月単価を並べても比較になりません。年収は次の式で決まります。
年収 = 時間単価 × 月の稼働時間 × 12
稼働日数を減らして年収を保つには、時間単価を上げる必要があります。時間単価を上げにくい職種や領域にいる人は、空いた日の使い方で総収入を補うことになります(後半で説明します)。
2026年の相場:平均時間単価5,319円・平均月単価約80万円
Findyの2026年調査では、フリーランスエンジニアの平均時間単価は5,319円で、前回調査より200円上がりました。平均月単価は約80万円です。同じ調査では、ハイスキル層を中心に、フルタイム並みの収入を保ちながら稼働日数を抑える働き方が広がっていると報告されています(出典:Findy調査/PR TIMES掲載リリース)。
なお、本記事の数値はすべて平均値です。実際の単価は職種、経験年数、商流によって大きく変わります。
【早見表】週3・週4・週5の月単価・年収・可処分時間
時間単価5,319円で計算した場合
前提は1日8時間、月の稼働日は週3=12日、週4=16日、週5=20日です。
| 稼働 | 稼働率 | 月の稼働時間 | 月額 | 年収 | 週5の年収を保つのに必要な時間単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 週3 | 60% | 96h | 約51.1万円 | 約613万円 | 約8,865円(+約67%) |
| 週4 | 80% | 128h | 約68.1万円 | 約817万円 | 約6,650円(+25%) |
| 週5 | 100% | 160h | 約85.1万円 | 約1,021万円 | ― |
平均月単価(約80万円)と、時間単価×160時間(約85万円)は一致しません。これは、多くの契約が月140〜180時間の精算幅で実稼働を清算していることと、2つの平均値の母集団が異なることによるものです。
時間単価別の年収マトリクス
| 時間単価 | 週3(96h) | 週4(128h) | 週5(160h) |
|---|---|---|---|
| 4,000円 | 約461万円 | 約614万円 | 768万円 |
| 5,319円 | 約613万円 | 約817万円 | 約1,021万円 |
| 6,500円 | 約749万円 | 約998万円 | 1,248万円 |
| 8,000円 | 約922万円 | 約1,229万円 | 1,536万円 |
※すべて「時間単価×月の稼働時間×12」で計算した値です。
可処分時間で見ると週4が最も効率がよい人が多い
週4にすると稼働しない日が月4日、週3なら月8日増えます。時間単価6,650円で週4を回せば、週5と同じ年収のまま月4日を自由に使えます。この空いた日に副業や学習を入れたときの実質年収については、後のセクションで説明します。
週5の単価を週3・週4に換算すると比例計算どおりにならない理由
クライアントがお金を払う対象は、作業時間よりも「その人がいることで解決する課題」です。課題が週2〜3日の関与で解決するなら、時間単価は上がりやすくなります。
割増になるケース:専門性が高い、成果で測れる、技術顧問・PM支援
典型的なのは、アーキテクチャの設計レビュー、SREやセキュリティの専門支援、AI・LLM導入の技術顧問、テックリード代行です。会議と意思決定に時間を使う役割は、稼働日数を減らしても価値が下がりにくい傾向があります。
割引になるケース:作業量で評価される実装案件、常駐、エージェントの最低稼働条件
チケットを消化する実装案件を週3にすると、引き継ぎや同期のコストがクライアント側にかかります。そのため、比例計算よりも単価を下げられやすくなります。エージェント経由の案件には「週4以上」「140h以上」といった下限条件が付いていることも多く、週3を希望すると応募できる案件そのものが減ります。
週5で月80万円の案件を週3にした場合の仮の計算例は次のとおりです(事例ベースの想定で、統計値ではありません)。
- 割引:月42万円前後(時間単価 約4,375円)
- 比例:月48万円(時間単価 5,000円)
- 割増:月55万円前後(時間単価 約5,729円)
自分の案件がどちらに振れるかを判断するチェックリスト
- 作業時間ではなく成果物で評価されるか
- 他のメンバーと毎日同期する必要がどれだけあるか
- 代わりの人が見つかりにくいスキルか
- リモートで完結するか
当てはまる項目が多いほど、割増側に振れやすくなります。
浮いた1〜2日の使い道:2社目・AI案件の実績作り・学習の比較
| 使い道 | 今年の収入への影響 | 来年以降の時間単価への影響 | 疲労・切り替えの負担 |
|---|---|---|---|
| 2社目の週1〜2案件 | 大きい | 小さい | 大きい |
| AI案件で実績を作る | 小〜中 | 大きい | 中 |
| 学習・資格 | なし | 中(案件の要件と結びつけば大きい) | 小 |
組み合わせのモデルケース3つ
以下の試算では、2社目とAI案件の時間単価を仮定の値で置いています。
- モデルA(収入を最大化):週4メイン(約68.1万円)+週1の2社目(4,500円×32h=14.4万円)。月約82.5万円、年約990万円になります。ただし2社目の時間単価が低いと、総額は増えても実質の時給は下がります。
- モデルB(単価を上げる投資):週4メイン+週1をAI・LLMの小規模受託やOSSに充てます。2社目を時間単価3,000円と仮定すると月約77.7万円です。半年〜1年かけて実績を積み、次の契約更新で時間単価6,500円を目指します。達成できれば週4だけで月約83.2万円になります。
- モデルC(稼働を減らす):週3メインの高単価な顧問型案件(8,000円)で月76.8万円、年約922万円です。残りの日は学習と休養に使います。年収はやや下がりますが、時間単価は3つのモデルで最も高くなります。
筆者の周りでも、2社を掛け持ちした結果、障害対応や定例が重なって実質週6稼働になった例を何度も見てきました。「合計で週5日を超えない」という上限ルールを最初に決めておいてください。AIスキルで単価に差がつく理由は、Node Bridgeの「AI活用による単価差」の記事で詳しく解説しています。
週3・週4案件の探し方:エージェントと直請けの検索条件
エージェントで絞り込む条件
「週3〜」「週4〜」「フルリモート」「稼働時間 100h〜」などを組み合わせて検索します。気になる案件が見つかったら、記載の月単価を想定稼働時間で割り、時間単価に直してから比べてください。月単価の上限や下限だけで並べると、短時間案件を不当に低く評価してしまいます。
リモートと稼働日数を同時に条件にしても単価を落とさない組み合わせ
Findyの2026年調査(PR TIMES掲載)では、リモート案件の平均月単価は約80.3万円、常駐は約73.4万円で、差は約6.9万円でした。リモートを条件に加えても、単価が下がる理由にはなりません。
- 単価を落とさない組み合わせ:フルリモート × 週3〜4 × 設計・リード・専門領域
- 単価を落としやすい組み合わせ:常駐 × 週3 × 実装のみ
直請け・リファラルで週3案件をつくる方法
有効なルートは、現在のクライアントとの契約を週5から週4に切り替えること、元同僚や勉強会からの紹介、技術顧問を募集するプラットフォームの3つです。プロフィールには「週4・リモートで○○の課題を解決できる」のように提供価値を先に書き、稼働日数の話はその後に回します。
時間単価を下げずに稼働日数を減らす交渉の手順とメール例文
交渉の前に準備すること
交渉は契約更新の1〜2か月前に始めます。準備するのは、実績の数値化(改善した指標や削減した工数など)、引き継ぎ案、切り替え時期の3点です。提示する数字は月単価ではなく、「時間単価は据え置き、月の稼働を160hから128hにする」という形にします。この形なら値上げ交渉に見えにくく、クライアントも予算を計算しやすくなります。
例文1:契約中のクライアントに週5から週4への変更を相談する
``` 件名:次期契約(1月〜)の稼働条件についてのご相談
株式会社○○ △△様
いつもお世話になっております。□□です。 次期契約について、稼働条件のご相談をさせてください。
現在担当している決済基盤の改修では、APIの平均応答時間を40%短縮し、 運用ドキュメントの整備も完了しました。 今後は設計レビューと品質面の判断により集中したいと考えております。
つきましては、1月以降の稼働を以下のように変更できないでしょうか。 ・時間単価:現行のまま(5,319円) ・稼働時間:月160h → 月128h(週4日、金曜は非稼働) ・月額:約85万円 → 約68万円
非稼働日の緊急連絡はSlackで受け、翌営業日の午前中に対応します。 12月中に担当範囲の引き継ぎ資料を整え、チーム内での共有会も実施します。
ご検討いただけますと幸いです。15分ほどお時間をいただければ、詳細をご説明します。
□□(フリーランスエンジニア) メール:xxx@example.com ```
例文2:新規案件で週3〜4・時間単価を維持したまま提案する
``` 件名:【ご応募】LLM導入支援案件について(週4・フルリモートでのご提案)
ご担当者様
はじめまして、□□と申します。 貴社のLLM導入支援案件を拝見し、ご連絡しました。
前職でRAG基盤の設計と運用を担当し、問い合わせの一次回答率を30%改善しました。 本案件では、要件整理・アーキテクチャ設計・評価基盤の構築を担えます。
稼働は週4日(月128h目安)、フルリモートでのご提案となります。 時間単価は6,500円(月額 約83万円)を希望します。 定例やレビューには稼働日を合わせて参加します。
職務経歴書を添付しました。一度お話の機会をいただけますと幸いです。
□□ ```
断られたときの代案
まずは2〜3か月かけて段階的に移行する案(週5→週4.5→週4)を出します。それも難しい場合は、成果物ベースの契約に切り替える方法があります。単価交渉そのものの進め方は「単価交渉」の記事を、相場の全体像は「単価相場」の記事を参照してください。
週3・週4で働く前に確認すること(会社員エンジニア向けの補足を含む)
社会保険・税金・法人化は年収のどこから効いてくるか
週3相当(約613万円)と週4相当(約817万円)では、法人化を検討するかどうかの判断が変わります。売上が800万円を超えるあたりから比較する価値が出てくるため、詳細は「法人化」の記事で確認してください。
稼働日を減らすと、収入の変動は大きくなります。一般的な目安として、生活費の6か月分程度を手元資金として確保しておくと安心です。
会社員から週3・週4フリーランスに移るときの最初の一歩
会社員の方は、まず副業として週1〜2日の案件を受け、自分の時間単価がいくらで成り立つかを確かめてください。実際に相場を知ってから独立を判断すれば、独立前のリスクを抑えられます。
まとめ:時間単価を軸に、稼働日数と年収を設計する
週3・週4で年収を維持できるかは、月単価ではなく時間単価で決まります。2026年の平均時間単価5,319円で計算すると、週4なら年約817万円、週3なら年約613万円です。週5と同じ年収を保つには、週4で時間単価を約25%、週3で約67%上げる必要があります。この差は、顧問型や設計型の役割、フルリモートの案件を選ぶこと、そして時間単価を据え置いたまま稼働時間だけを減らす交渉で埋められます。
次にやることは3つです。
1. 自分の現在の時間単価を計算する(月額 ÷ 実稼働時間) 2. 次の契約更新日を確認する 3. 例文をもとに相談メールの下書きを作る
Node Bridgeでは、週3・週4やフルリモートの条件で案件を探せます。気になる案件の月単価を時間単価に直して、今の契約と比べてみてください。稼働日数を減らしても単価を落とさない次の契約を探す際に役立ちます。
